ウィッグのテープタブがベタつく・割れる原因は?「加水分解」の寿命と修理の限界
ウィッグの装着感を高めるために、テープタブ(テープを貼る部分)には「ポリウレタン(PU)」という素材がよく使われます。
ポリウレタンは薄くて肌に馴染みやすく、ラバー素材よりも丈夫なのがメリットです。しかし、この素材にはどうしても避けられない弱点があります。 それが「加水分解(かすいぶんかい)」による経年劣化です。
今日はテープタブが劣化する原因とサイン、そして「修理できるのか?」という疑問にお答えします。
ポリウレタン劣化の原因「加水分解」とは?

「久しぶりに履こうとしたスニーカーの底が、ボロボロに崩れてしまった」 そんな経験はありませんか? 実はあれと同じ現象が、ウィッグのテープタブでも起こります。
加水分解とは、その名の通り「水分」と反応して素材が分解してしまう現象です。 空気中の湿気だけでなく、装着中の「汗」や「皮脂」も大敵です。これらが素材に浸透することで、徐々にポリウレタンの性質が変わり、ボロボロになったりベタベタしたりし始めます。
こんな症状が出たら要注意|劣化の4大サイン
加水分解が進むと、テープの付きが悪くなるだけでなく、最悪の場合は装着中に破れてしまうこともあります。次のような症状が出ていないかチェックしてみてください。
1)ベタつき(初期〜中期)
表面がネチャネチャして、触ると手にまとわりつくような感触になります。 テープを剥がした後に糊が残りやすくなったり、ホコリが付着して黒ずんだりします。
2)ひび割れ・亀裂(中期)
表面に細かい線(クラック)が入ります。 初期は「うっすら線が見える程度」ですが、進行すると亀裂が深くなり、そこから裂けやすくなります。
3)硬化(中期〜後期)
新品の頃のしなやかな弾力が失われ、プラスチックのように硬くなります。 肌当たりが悪くなるだけでなく、着け外しの動きで「パキッ」と割れるリスクが高まります。
4)粉吹き・剥離(後期)
表面が白っぽく粉を吹いたようになったり、コーティングがポロポロと剥がれ落ちたりします。ここまで来ると寿命が近いです。
劣化は直せる?|修理できること・できないこと
結論からお伝えすると、一度加水分解して変質したポリウレタンを**「新品の状態に戻す」ことは化学的に不可能**です。 ですが、状態によっては「延命」や「部品交換」での対応が可能です。
【軽症の場合】コーティングで延命
「表面に少しひび割れがある」「少しベタつく」程度であれば、特殊な樹脂で**「再コーティング(上塗り)」**を行うことで改善できる場合があります。
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ベタつきを抑える
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表面をなめらかにする
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これ以上の進行を遅らせる
といった効果があります。ただし、あくまで「表面の補修」であり、素材内部の劣化が止まるわけではないため、「一時的な延命処置」と捉えてください。
【重症の場合】テープタブの交換
以下のような場合は、コーティングでは追いつきません。
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亀裂が深く、ベース素材まで達している
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全体が激しくベタついている
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硬化して割れる寸前である
この場合は、劣化したポリウレタン部分を取り除き、新しい素材に付け替える「交換修理」が現実的です。工場で部分的に新品の素材に交換するため、耐久性は確実に復活します。
少しでも長持ちさせるための「予防ケア」

加水分解は完全に防ぐことはできませんが、日頃のケアで進行を遅らせることはできます。
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水分・油分を残さない 外した後は、テープタブについた汗や脂をきれいに拭き取ってください。水分が残っている時間が長いほど、劣化は進みます。
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湿気の少ない場所で保管 洗面所やお風呂場など、湿度の高い場所に置きっぱなしにするのは避けましょう。通気性の良い場所がベストです。
「おかしいな?」と思ったら早めのご相談を
ポリウレタンの劣化は、放置すればするほど修理の選択肢が減り、最後は「交換」しかなくなってしまいます。
「なんとなく表面が荒れてきたな」「最近テープの糊が残りやすいな」 そう感じたら、それはウィッグからのSOSです。
完全に壊れてしまう前に、メンテナンスのついでに一度状態を見せてください。「コーティングで済むのか」「交換が必要か」、プロの目で最適な方法をご提案します。










